【感想】小説「しろがねの葉」

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この記事では、第168回直木賞受賞作の「しろがねの葉」という本を紹介します。

本作品は、世界遺産にも登録されている石見銀山が舞台となった作品です!

読むと世界遺産の石見銀山に行ってみたくなる作品です!

書籍情報

タイトルしろがねの葉
著者千草茜
出版社新潮社
発行日2022/9/29
ページ数320

千草茜さんの書籍はほかにも何冊か読んだことがありますが、よく書き込まれた人物像が魅力的です。

また、本作品は、史実を元に構成されており、当時の石見の登場人物や、町の活気、山の風景、音、空気感などが鮮明に伝わってくる作品となっています。

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感想(10件)

石見銀山について

石見銀山は、世界遺産にも登録された遺跡です。

日本に鉄砲が伝来する発端ともなった南蛮貿易の主力商品「石見銀」の採掘で有名で、世界が日本に注目するきっかけとなりました。

そんな石見銀山で、江戸初期の時代に、天才山師に育てられた少女ウメが、女であるが故に訪れる様々な運命に抗いながら、鉱山を強く生き抜く様が描かれています。

あらすじ

豊臣秀吉の天下の時代、唐入りのための徴兵で少女ウメが暮らす山村でも百姓が不足し、食料不足で越冬が難しい状況になっていた。

ウメの父親は、近くにある石見の国は銀の産出で繁栄していることを知り、村の蓄えである米を盗んで一家で石見を目指して夜逃げを決行する。ところが、道中で村の衆に見つかり、ウメ一人で山を越えて石見を目指すことになる。

幼いウメはボロボロになりながら石見の仙ノ山に到達し倒れているところを、天才山師の喜兵衛に発見され、喜兵衛の手子として石見で暮らし始める。

ウメは暗闇でよく物が見える性質を持っており、子供ながらに間歩を見つけるなど、他の男の手子を上回る才能を持っていた。喜兵衛から山で生き延びる方法を教わりながら成長する中で、自分も男に混ざって銀堀になることを望むが、次第に女性であることが障壁となってくる。

その運命に必死に抗うウメは、どのようにして生きることを選ぶのか。

感想

「しろがねの葉」を読んだ感想を書いていきます。

女であるということの障壁

ウメは自ら間歩(銀鉱床)を見つけたことや、天才山師の喜兵衛の手子となったことで、他の男の手子からも嫉妬されるような存在だったのに、年を追うごとに周りの男の手子の方が力が強くなっていくのを肌で感じるようになります。

気が付けば手子をしていた周りの男の子は次のステップへとキャリアアップする一方で、自分は女であることを理由に間歩に入ることさえも叶わないようになってしまいました。

男は銀堀して家族を養う、女は子供を産み、次の世代の銀堀を生み出す、というような構造は、石見の銀堀がみな短命であったこと考えると理にかなっているようにも思えますが、江戸初期の時代に、このような固定観念に抗い男と同じように銀堀になりたいと願ったウメの姿は、現代にも通ずる部分があるように感じました。

銀堀としての生きざま

石見銀山の銀堀たちは、作業中に煤を吸引して塵肺となり、30歳になるころにはほとんど亡くなっていたそうです。

銀堀を夫とするということは、体調を崩すとわかっていても仕事に送り出さないといけないということ。

それでもウメが夫に銀堀をやめるように言わなかったのは、石見の男として生まれ銀堀となる誇り、アイデンティティ、「男としての生き方」を尊重していたからなんだろうと思います。

さいごに

「女としての生き方」、「男としての生き方」という考え方は現代にもあり、多様性の時代ですから昔よりは柔軟になっているかもしれませんが、子を産めるのは女性だけで、その役割が完全に同一になることはないと思います。

どちらに優劣があるということではなく、互いの考え方を尊重し合うということは大切なことの一つなのかもしれません。

仕事や恋愛、結婚、妊娠などの人間の営みが、江戸時代の時間軸で描かれた名作だと思いますので、まだの方は是非手に取っていただきたいです

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